ミナ ペルホネンがスパイラルで展覧会(2020年11月)

 デザイナー皆川明氏が設立したファッションブランド「ミナ ペルホネン(minä perhonen)」。時とともに色あせるということがない、日常使いできる洋服と、その素材である落ち着きのあるデザインのテキスタイルが特徴です。そのミナ ペルホネンが2020年11月に東京・表参道のスパイラルで「風景の色 景色の風/feel to see」が開催されました。

 ミナ ペルホネンはオリジナルのテキスタイルを材料に服や家具などを作っています。最終的なデザインを決定づける質感や色、グラフィックについてはテキスタイルのデザインが果たす役割が大きいことから、そのオリジナルのテキスタイルに焦点をあてた展覧会を開催しました。

 会場入り口は森の木々の模型が置かれ、その間を縫って中へ向かいます。

 1階カフェの横では、縦長のテキスタイルを天井から吊り下げ、下辺を上下させて波のように動かして見せていました。表と裏で色合いが違っていて、ひるがえった時のイメージとそれが他のテキスタイルとどのように調和されるのかが表現されていました。

 スパイラル1階の一番奥、スパイラルガーデンは2階まで吹き抜けになっている広々とした空間です。1階の舞台部分にはディスプレイが置かれ、これまでのテキスタイルデザインが動画で映されていました。そして、この空間はそのディスプレイと舞台を囲む円形の壁を大きな布で包み込んでいました。そのデザインから森の中にいるような感覚になります。

 2階にあるショップ、スパイラルマーケットへは階段を上っていきます。途中が広い踊り場が中2階のようになっており、今回の展覧会ではそこにミナ ペルホネンの初めてが展示されていました。初めての服、初めてのクッション、初めての刺繍、初めてのバッグ。なかには初めての雑誌特集として雑誌「装苑」が置いてありました。この空間も背景には森のデザインがありました。

さらに、初めての家具も紹介されていました。1995年にミナ ペルホネンを立ち上げたころ、皆川さんは魚市場で働いていたということです。筆記用具などを仕切るのに市場でもらってきたイクラの箱を使っていたのを、初めてのアトリエとして紹介されていました。 

 また、展覧会と同時期、スパイラル3階のスパイラルホールではバッグなどの販売会も開催されていました。

 スパイラルは青山通りに面していて、通常であればガラス越しに歩行者や自動車の流れを眺めることができるのですが、この展覧会ではここもミナ ペルホネンのテキスタイルで会場全体を覆っているようでした。

 スパイラル5階には「call」というミナ ペルホネンの洋服や生地が用意されているショップと軽くランチなどがとれるカフェがあります。エレベーターで上ってください。

(2020年11月17日)

(追記)

 ミナ ペルホネンは、この展覧会の後も日本各地の美術館などで「つなぐ」展を開催していました。

 また、今年2025年11月から来年2026年2月にかけて世田谷美術館で「つぐ minä perhonen」展が開催されます。ブランド創設から30年が経ち、手仕事と職人との協業、暮らしのなかに調和するだけでなく時を重ねて深みを増すデザインの積み重ねが、皆川明氏の「せめて100年つづくブランド」という想いとともに次の時代にどのようについでいかれるのか。そういった展示が見られるのではないかといまからワクワクします。

(2025年9月23日)