JAL機長飲酒問題 ホノルル発羽田行きJL71便は機体整備も重なり4日連続で翌日発に大幅遅延
日本航空(JAL)の機長が社内規定に違反して飲酒し、出発便が遅れた問題で、国土交通省は9月10日、JALを厳重注意しました。テレビやウェブニュース、新聞などで報じられました。
この機長が乗務予定だったのは、8月28日にホノルル国際空港(ダニエル・K・イノウエ国際空港)を出発する中部国際空港行きJAL(JL)793便で、この便を含む3便が最大18時間遅延したとされています。
JL793便には代わりの機長が乗務し2時間8分遅れで出発しましたが、実際に大きな迷惑を受けたのは、もともとその代替機長が乗務する予定だった羽田空港行きJL71便の乗客でした。JALはJL71便で空席となった機長の乗務枠を当日中に埋め合わせることができず、出発が翌日まで延びたためです。帰国が日をまたぐとなると、翌日の用事をキャンセルしたり、人によっては休暇を延長したり、仕事を代わってもらえる人を探したりと乗客の負担が増えます。
確認できた範囲では、このJL71便を取り上げたのは航空業界ニュースを扱う一部の報道に限られていました。影響を受けた3便の乗客数は合わせて637人という報道もありましたが、JALの公式ウェブサイトに掲載されたプレスリリースにはJL793便の情報しか記載されていません。プレスリリースは、特に今回のように不祥事を伴うものについては、会社幹部の中の広報担当者が判断し、場合によっては社長などトップの了承を経て発表されるのが普通ですので、企業として本当に乗客に寄り添う姿勢があるのかどうかについては懸念が残ります。
ホノルル国際空港発・羽田空港行きJL71便は夕方に出発するため、ハワイ旅行の最終日でもお昼ごろまでワイキキ周辺を観光してから十分に間に合う魅力的な帰国便です。
しかし、機長の飲酒問題で生じた乗務員交替に加え、整備に伴う機体変更の影響で、8月28日(木)から8月31日(日)までの4日間、連続して出発が翌日に延期される事態となりました。今後JL71便を利用する場合は、このようなリスクを考えて旅行の予定や帰国後の計画を立てておいたほうが安心かもしれません。

JALの時刻表によると、お盆の臨時便増発が終了した8月17日以降、ホノルル国際空港を発着するJAL便は、羽田空港便が2往復、成田空港便、中部国際空港便、関西国際空港便がそれぞれ1往復となっており、計5往復、10便が運航されています。
成田空港便はボーイング767、それ以外はボーイング787ドリームライナーです。成田便は折り返し成田行きとなりますが、それ以外の便は到着した順番に次の出発便として利用されます。例えば、9時45分に到着した羽田発JL74便は、折り返し関西国際空港行きJL791便として11時50分に出発します。
操縦士は同時に複数の機材を操縦する資格を持つことができません。ボーイング767の操縦士はボーイング787を操縦できないため、成田便に乗務した場合は必ず成田に戻ります。一方、ボーイング787の操縦士は羽田、関西、中部の各便に乗務できます。つまり、これら3路線であれば、予定とは別の便に配置換えできます。
JL793便機長の飲酒がJL71便の大幅遅延に
JL71便の遅延が始まったきっかけは、JALの機長が社内規定に違反して滞在先で飲酒していたことでした。報道によると、前日の8月27日(水)に羽田発ホノルル着JL72便で到着した機長は午後の早い時間にアルコール度数の高いビールを、それも3本も一人で飲んだということです。翌28日(木)起床時の自主的な検査でアルコールが検出され、ホテル出発時刻になっても改善はわずかだったといいます。
この機長は14時20分発の中部国際空港行きJL793便に乗務する予定でしたが、その後の羽田空港行きJL71便の機長が代わりに乗務し、JL793便は2時間8分遅れの16時28分に出発しました。大幅な遅延となったものの、それでも当日中に出発できました。
問題はJL71便に代わりのパイロットがいなかったことです。報道によると日本から派遣するしかなく、この日はすでに日本からの到着便は終わっていたため、翌日まで待たなければなりませんでした。JL71便の出発が日をまたいでしまったのは、そういった理由があったようです。その結果、28日のJL71便が実際に出発したのは18時間41分遅れの29日(金)11時16分でした。JL793便よりもさらに長い遅延となりました。
操縦士手配の影響はさらに翌日、29日のJL71便にもおよび、この便が実際に出発したのは18時間21分遅れの30日(土)10時56分でした
8月30日、31日もJL71便に遅延が発生し、両日とも羽田空港到着は予定の翌日となりました。ホノルル出発が日をまたいだためです。理由は機体の整備とそのための機体割り当ての変更でした。
8月30日はホノルルをお昼に出発予定のJL73便も遅れましたが、予定当日中に到着できました。それに対して、JL71便は翌日へ持ち越されるほどの大幅な遅れとなりました。このことからも、遅延の理由が機材のやりくりであっても、その影響が最終便であるJL71便にシワ寄せされたことがわかります。結果として、乗客はハワイでもう一泊しなければならない状況に置かれたということです。

機体変更、乗務員交替の影響は最終的にJL71便で調整
JL71便はホノルルを16時35分に出発し、羽田には翌日19時45分に到着するスケジュールです。
ワイキキからホノルル空港までの移動、空港での搭乗手続き・保安検査に計3時間かかるとしても、13時35分にワイキキを出発すれば間に合います。ホテルをチェックアウトした後に昼食や買い物を楽しめるため、帰国日でもお昼過ぎまでハワイを満喫できる魅力的な便です。
しかし、4日連続で出発が翌日に持ち越されたことを考えると、今後も同様の事態が起こり得ると想定しておいたほうがよいでしょう。実際、飲酒した機長は中部国際空港行きJL793便に乗務予定でしたが、翌日へ延期されたのは最終便のJL71便だったのですから。航空会社の拠点である羽田空港へ向かう便の方がトラブルへの対処がしやすいという事情があるかもしれません。そうだとすると、ホノルル発の他の便よりも最終便で羽田空港行きのJL71便に影響が集中しやすいという理由になります。
この便を利用する場合、そのリスクを頭にいれて計画を立てたほうがよさそうです。
仮に帰国便の遅延でハワイ出発が翌日にずれこんだ場合は、今回の事例から出発時刻は10時から12時の可能性が高いと考えられます。出発予定当日に航空会社から遅延の連絡が遅ければ、すでにホテルを出発し空港に向かっているかもしれません。カウンターで遅延が告げられてからワイキキに戻るとなると、さらにハワイでの時間が短くなります。翌日のホテル出発は早朝になるため、夜遅くまで楽しむのも難しくなるでしょう。
また、ツアーで荷物を空港まで送り届けてくれるサービスを利用している場合、前日のうちに荷物を回収されるかもしれませんので、その点も覚悟しておいたほうがよいかもしれません。
今回の事例から、JALは機体変更や今回のような乗務員交替の調整を、ホノルル発最終便のJL71便で行う傾向があることがわかりました。ハワイ最終日を長く楽しめる魅力的な便である一方、翌日への延期リスクを考慮して旅行を計画したほうがよいでしょう。
(2025年9月11日)