印象派 モネからアメリカへ 東京都美術館

 東京都美術館では、2024年1月27日(土曜日)から

印象派 モネからアメリカへ −ウスター美術館所蔵−

 が開催されています。(4月7日、日曜日まで)

 ウスターはアメリカ・マサチューセッツ州のボストンに次ぐ州内2番目の都市で、ボストンから西に約70km離れた位置にあります。

 ウスター美術館は1898年に開館し、約4万展の作品を所蔵しています。

 今回の「印象派 モネからアメリカへ」では約70点の作品が展示され、そのうち50点強がウスター美術館所蔵でした。

 会場は企画棟の地下1階から始まります。入り口には今回のテーマの一つであるクロード・モネの《睡蓮》が拡大してデザインされていました。会場内は原則として撮影禁止ですが、4つの撮影ポイントが設けられています。入り口がその撮影ポイントの1つでした。

 

 地下1階は Chapter 1「伝統への挑戦」、Chapter 2「パリと印象派の画家たち」です。特に Chapter 2 ではパンフレットにもなっている チャイルド・ハッサムの《花摘み、フランス式庭園にて》の赤や白の花と草木の緑が鮮明な作品があり、その後に14通の書簡などが展示されていました。1909年から1910年にかけて ウスター美術館 と当時 クロード・モネ の作品を扱っていた デュラン=リュエル画廊 との間のやりとりです。これらの書簡などからクロード・モネの《睡蓮》を美術館が購入するまでの交渉内容がわかります。

 そして、書簡の次にはその《睡蓮》(1908年)が展示されていました。世界で初めて個人としてではなく美術館として購入した《睡蓮》だということです。

 エスカレーターで1階に昇ります。この階の会場の前半は Chapter 3「国際的な広がり」で印象派の影響を受けた画家たちの作品が展示されていました。日本からは黒田清輝や久米桂一郎たちです。黒田清輝の《落葉》は東京国立近代美術館の所蔵で、他の日本人画家の作品も日本各地の美術館から集められていました。

 1階後半のChapter 4「アメリカの印象派」ではヨーロッパに留学したアメリカ人画家たちが帰国してから描いた作品や、その影響を受けた画家たちの作品が展示されていました。ウスター出身の ジョゼフ・H・グリーンウッド は地元のマサチューセッツで活動し、その風景を描いています。白い花をつけた《リンゴ園》も印象派に類似しているとされていますが、本人は様式的な分類にとらわれずに作品を描いていったということです。

 1階の会場を出たところで2つ目の撮影ポイントがありました。ハッサムの《花摘み、フランス式庭園にて》で、赤と白の花の絵がポスターの手前に置かれていました。ポスターとこの花の間に立てば立体感のある記念写真が撮れそうです。この後、エスカレーターで2階の会場へ向かいます。

 エスカレーターを上った2階の会場は Chapter 5「まだ見ぬ景色を求めて」。ポール・セザンヌやポール・シニャックなどの作品です。その中でも デウィット・パーシャル《ハーミット・クリーク・キャニオン》に焦点が当てられていました。グランド・キャニオンの近くを走る鉄道会社は5人の画家を目隠しして現地に連れていき、初めて目の当たりにした記憶に残る景色を描いてもらったということです。その一つがこの作品でした。観光需要を掘り起こすための広告ポスターのような絵画です。

 Chapter 5 の次は映像コーナーです。ウスター美術館の館長や学芸部長が登場してウスターの街や美術館の説明、今回の展示作品の解説が流れていました。

 そして第3の撮影ポイントです。今回の展示作品の中から15の絵画が集められていました。

 展覧会ショップを抜けてエスカレーターを下った1階に最後の撮影ポイントがありました。ここの椅子に座って記念写真を撮ってもらおうという趣向のようですが、見ているとこの写真のように椅子を含む全体像を写真に収める人が多いようです。

 さらにエスカレーターで地下1階に戻って借りていた鉛筆を返して会場を出ます。

 なお、展覧会ショップで販売されていた図録は2種類用意されていました。表の表紙がモネの《睡蓮》、裏がパーシャルの《ハーミット・クリーク・キャニオン》のものと表がハッサムの《花摘み、フランス式庭園にて》、裏がグリーンウッドの《リンゴ園》のものです。

 その他にTシャツ、裏地に《睡蓮》の絵がプリントされているおしゃれなサコッシュもあります。猿田彦珈琲の紙ドリップコーヒーは5つの作品がそれぞれの袋に印刷されていました。おもしろいのは美術館の名前にあわせた「ウスター展ソース」です。展覧会ショップでしか購入できないとアピールしていました。

 入り口のある中央棟の1階と2階には上野精養軒が運営するレストランやカフェがあり、企画展の作品をイメージした料理が用意されています。たとえば2階のレストラン・ミューズではパンフレットにもなったハッサムの《花摘み、フランス式庭園にて》をイメージした「真鯛のポワレ 春菊のソースで」に、ボストンクラムチャウダーを付けた料理でした。1階のレストランではコース料理も提供しているということです。

「印象派 モネからアメリカへ」は巡回展が予定されています。

 郡山市立美術館(福島県、4月20日から6月23日)

 東京富士美術館(東京・八王子、7月6日から9月29日)

 あべのハルカス美術館(大阪・天王寺、10月12日から来年2025年1月5日)

 

 ※東京都美術館以外の会場では日本の美術館が所蔵する作品のうち数点が展示されないということです。

(2024年1月28日)